諫早干潟が問いかけるもの
 

「日本干潟サミット」(にほんがたさみっと)

 
緊急報告/諫早干潟・和白干潟・曽根干潟・吉野川・藤前干潟・三番瀬

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日時/7月27日(日)午後1:00〜5:00
7月28日(月)長崎県知事申し入れ
場所/長崎市平和会館 長崎市平野町 7−8
 
参加カンパ/前売1000円・当日1200円
 
主催/日本湿地ネットワーク・WWFJ・諫早干潟緊急救済本部
後援/NACSJ・日本野鳥の会
公共事業チェックを求めるNGOの会
協賛/週刊金曜日

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諫早干拓のギロチン堤防閉め切りの映像は、日本中に大きなショックを
与えるとともに、日本の公共事業と自然保護のあり方を問う最大の問題
になりました。
 
諫早湾の水門を開けて海水をいれるか入れないかは、国政レベル、地元、
あるいは一般市民の間でも議論が起きていますが、情報が充分とは言え
ません。また干潟環境の重要性にいたっては、残念ながら皆無と言って
も過言ではないでしょう。
 
一方では、堤防閉鎖直後の4月16日には地球の友インターナショナル
の堤防閉鎖に対する抗議文が、5月26日には英国王室のエディンバラ
公フィリップ殿下の干潟保全を求める親書が日本政府に送られました。
さらにアメリカでは大規模な「諫早を守るアメリカNGO連合」が結成
され、日米両政府に働きかけています。アメリカ国務省はこのNGO連
合に対し、その活動を高く評価し、諫早の事態を深刻に捉え、日米渡り
鳥条約の適用について調査を行なっていることを伝えてきています。
 
日本湿地ネットワーク/JAWAN(代表:山下弘文)では、この機会
をとらえて、諫早干潟緊急救済本部の活動”水門を開けて潮を一刻も早
く干潟に入れる”ことの支援と、諫早以外にも危機的状況にある日本の
干潟の現状についてアピールすることを目的に、長崎市で約1000人
規模のシンポジウムを開催いたします。
尚、ご不明な点は下記JAWAN・ガタサミット実行委員会までお問い
合わせ下さい。
 
JAWAN・ガタサミット実行委員会
担当:
松本悟 TEL092-542-5515, FAX092-542-5514
伊藤よしの TEL/FAX 0940-43-0374, E-mail yorke@sannet.ne.jp
 


 27日の干潟GATAサミットに参加しました。台風直後であったため、
交通機関の混乱等もあり、プログラムの一部変更がありましたが概予定
どおりの内容で終了しました。
 くわしいことは、今後報告が載るであろう下記の各ホームページを参
照していただきたいと思いますが、わたくしが感じたことをいくつか、
簡単に述べたいと思います。

  1. 水害防止効果は希薄
  2. 不良官僚の置き土産
  3. 責任者になろう

水害防止効果は希薄
 閉め切りの理由の第一に掲げられている洪水の防止効果ですが、
この7月の大雨でやはり冠水してしまいました。農水省では「被害
は堤防のおかげで小さくなった」と発表しましたが、具体的に数字
を示さずに終わっています。
 さる6月には橋本首相が(主要国首脳会議で)外国人記者から諫
早湾干拓工事に関して質問を受けた際、「諫早では、過去にどれく
らいの水害が起こり、どれだけの人が亡くなったかご存じか」と例
の調子で切り返して、嘲笑され、もはや総理までもが行政の蚊帳の
外にいるらしいことを露呈するありさまでした。

 総理発言の基礎資料となったらしい、今年5月に長崎県諫早湾干
拓協議会がまとめた資料に、閉め切り堤防の防災効果をうたったペ
ージがあります。ところが、そこにある被害には……
 驚くことに、寛政4年の雲仙岳爆発による死者14,530人、とか
昭和57年の長崎豪雨の死者などが「諫早湾干拓」と因果関係がある
と断定されています。ひとつひとつ検証しなおすと、ほとんどが関
係を却下される事例ばかりで、干潟が原告になって名誉毀損で訴え
られそうなおそまつさです。

 もとより、高低差のない干拓地での排水は、ポンプによる強制排
水が妥当な選択のはずです。あるいは、これまで諫早湾で行われて
きた「地先干拓」という自然排水を味方にした干拓事業が有利でし
ょう。閉め切り堤防で「腐敗池」を造成し、その廃液を有明海に垂
れ流して、周辺漁業を壊滅させるのが農水省の事業といえるでしょ
うか。

不良官僚の置き土産
 最近、「普通の子ども」による凶悪犯罪が頻発していて、政府や
教育関係者はバタバタしているようですが、当の子どもたちにして
みれば「ざまあみろ」「やったぜ」という顔が心の底にあるんじゃ
ないでしょうか。
 誰に向けられた「ざまあみろ」なのか、少年法うんぬんを言う前
に、大人の皆さん、胸に手をあてて考えてみてはいかがでしょう。

 こんな事業計画を、さもしたり顔で行っているお役人さんたちは、
まさに不良官僚です。意味のわからぬ答弁書やパンフレットの作成
に汲々とし、その給料も資料集も税金から支払っているとはなさけ
なや。今後は、学会の論文よろしく、すべての資料に関係者の署名
を付けて発表し、責任の所在を明らかにしていただきましょう。
 「これは、わたくしが造ったダムです」「これはわたくしが進め
た工事です」と、なにも手出しできない地元首長の名入り記念碑で
はなく、担当者の名誉に帰してほしいものです。
 さすれば、もっと身を入れて事業計画を進めてくれるのではない
でしょうか。

責任者になろう
 干拓事業の採算性については、保母武彦(島根大学教授)氏によ
る試算が発表されました。

 まずその前に、日本の公共事業規模について、押さえておく必要
があるでしょう。というのは、年間50兆円という我が国の公共事業
費は、他の先進7ヵ国の同事業費総額を上回る額なのです。そして
1995年から2004年に予定されている公共投資基本計画は630兆円
にもなります。

 その一方、国の債務は344兆円に膨らみ、さらに地方の債務147
兆円や旧国鉄債務28兆円が加わり、火の車状態です。これら債務の
合計を国の人口で割れば、あなたにのしかかっている借金の重さが
わかるでしょう。まさに、親方日の丸どころか、親方火の車。

 さすがに、この状況について知らぬ顔はできず、「近い将来にお
いて破裂することが予想される大きな時限爆弾をかかえた状態であ
り、かつ、その時限爆弾を毎年大きくしている」(『財政の基本問
題に関する報告』より)と警鐘は鳴らしています。

 が、その警鐘をだれがまじめに受け止めているというのでしょう。
この国のいったい誰が。

 さて、保母氏は総務庁行政監察局の『大規模な農業基盤整備事業
に関する行政監察結果報告書/資料編』(1997年2月)を使って、
同事業費の推計を行いました。詳しい推計の手順は省きますが、
結果は次のとおりです。

国・県・受益者の実質負担額(推計) 単位:億円

区分

事業費

各主体別の実質支出・負担総額と内訳

総額

国負担

県負担

受益者負担

防災事業

1,439

1,731.6

1,290.6

441.0

-

農地造成

936

1,479.8

673.9

641.8

164.1

2,370

3,211.4

1,964.5

1,082.8

164.1

(%)

(100.0)

(61.2)

(33.7)

(5.1)

 発表されている事業費は2,370億円で、県はその10%を負担する
と安易に考えられていますが、元利償還額、実際の営農を可能にす
るための県の追加的補助金支出(干拓地の農地の金額を入植可能な
水準にするための差額補填)などを合わせると、県の負担は1千億
円を超えてしまいます。25年で償還するとして、長崎県は年間43
億円の財政支出となるのです。

 さらに、干拓地の営農コストとして基礎となる農地造成コストを
見てみますと、1haあたり約1億円です。そんな高価な農地に入
植できるわけがないので、分譲価格は110万円/10aと政策的に設
定される見込みです。すなわち、投下した事業費の9分の1です。
農業にそんな高い収益性が期待できるでしょうか。

 それでは、造成コストの9分の1という安さ?で入植できる農家
には薔薇色の明日が約束されているのでしょうか。営農者側から見
てみますと、8haの入植酪農家の土地購入費は8,800万円/戸。
これに施設や畜舎、大型農機の購入費用が加わりますが、これは現
実的な数字でしょうか。

 そもそも、公共事業はせめて地域的な経済採算性を前提にして推
進されるべきものです。現在、長崎県では約2年間で諫早湾干拓と
同じ面積の耕地が消えている状況にあり、さらにこのようなザル事
業を続けるとはあいた口がふさがりません。

 総事業費が、将来いくらになるか「さっぱりわからない」(構造
改善局課長補佐談 1997年2月)と述べているように、本当はみん
なが投げている事業(これがほんとの公共投資?)になっています。
広辞苑の改訂をお願いします。

 もはやだれも責任をとらず、工事で食っていくだけさという図。
あなたが、わたくしが反対するのは、流浪の旅をする公共事業につ
いて、その責任の所在をわたしたちの手につかかむためではないで
しょうか。このことが諫早湾干拓問題の核心だと信じます。

 最後に、諫早干潟緊急救済本部の山下さんによると、「もう鉄砲
玉がない。一円でも十円でも、よろしくお願いします」とのことで
した。わたくしからも重ねてお願い申し上げます。

諫早干潟緊急救済本部 代表 山下弘文
〒854 諫早市小野町1100-13
Phone 0957-23-3740
FAX 0957-23-3927
・十八銀行 東諫早支店 普030271 諫早干潟緊急救済本部
・郵便振替口座 01710-1-62594 諫早干潟緊急救済本部

 「諫早湾の閉め切り堤防のギロチンが、全国に放送されてから、
 たくさんの意見や励ましが寄せられました。が、わたしたちは
 ムツゴロウを助けたいために干拓事業に反対しているわけでは
 ありません。わたしたちの目指すものは、干潟とともに生きる
 ことです」       山下弘文(日本干潟サミットにて)


Isahaya-wan   Isahaya-Higata-Lab.     response-higata

 諫早湾の紹介        諫早湾干潟研究会    締め切りに異議あり!
             (干拓事業の詳しい説明)  反対だけど具体的な方法が
                           わからない方はこちらへどうぞ


※お時間がありましたら、上に紹介した三つのホームページへ
イメージをクリックしてお出かけください。

 
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